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ポワティエ大聖堂

本当に久方降りのブログ再開の第一回目は、ちょっと変わったゴシック建築であるポワティエ大聖堂のご紹介から。

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~ポワティエ大聖堂西正面~

ポワティエはパリの南約350kmに位置し、ポワトゥ・シャラント地域圏の首府、ヴィエンヌ県の県庁所在地で、郊外も含めると約25万人の人口を有するフランス中部で有数の都市だ。近くにあるFuturoscopeという科学技術のテーマパークは、大人でも十分楽しめ、私も家族連れで何とか遊びに行っている。

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~西薔薇窓と天使~

ポワティエの町は、地理的な立地から、経済、軍事、宗教、政治といったあらゆる観点から重要な拠点で、紀元前からこの地に町が存在し、4世紀には既に司教座が置かれていた。軍事の観点からは、世界史に疎い人でも、フランク王国がイスラムのウマイヤ朝を撃退した、トゥール・ポワティエ間の戦い(732年)位は聞いたことがあるのではと思う。バブル世代の私達には、フランスが80年代後半に、日本の電化製品(特にビデオデッキ等)を標的にし、特定品目の輸入をポワティエの税関に限定するといった政策を導入し、この半ば嫌がらせのような保護主義的な対応を、現在の「ポワティエの戦い」だ、と揶揄していたことが、ポワティエの町の名前を聞いて思い出されるだろうと思う。

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~西正面と南塔~

さて、ポワティエ大聖堂=Cathédrale Saint Pierre、聖ペテロ大聖堂、であるが、シャルトルからアミアンに繋がる古典ゴシックの系統から外れる、プランタジネット様式を採用した大聖堂として知られている。ロワール地方のアンジェ大聖堂や町のその他の教会堂で多く採用されたことから、アンジェ様式とも呼ばれているが、一番の特徴は、非常に鋭角な高い交差ヴォールトだ。代表として知られるアンジェ大聖堂では、交差ヴォールトの頂点は起点より3.5mも高くなっている。この様式は殆どフランス中部に集中しているが、同地域では、ペリグー大聖堂やアングウレーム大聖堂のような、円形ドームを戴いたロマネスク様式の大聖堂があり、ここに新様式であるゴシックの交差ヴォールトが入ってきたことから、両方が交じり合ったような形態が生まれた、とされている。

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~簡素で剛健な造り、ゴシック初期の作品~

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~タンパンの最後の審判の彫刻~

その他にもいくつか、他のゴシック大聖堂には無い特徴があるが、西正面から順に見て行きたい。写真をご覧の通り、横に広く南北に未完成の塔を従える。どちらかと言うと簡素な造り、着工が1155年頃、まだまだゴシック初期の作品だ。

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~プランタジネット様式の堂内~

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~非常に高い側廊~

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~広い堂内~

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~すらりとした石柱~

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~フライングバットレスの無い側面~

しかし、堂内に入ると印象は一変する。そこには広大なホールのような空間が拡がっている。身廊から側廊に開くアーケードは非常に高い。前者と後者の天井高はそれぞれ、30mと24m、スペインの一部のゴシック建築を除き、このような構造のゴシック建築は存在しない。勿論、フランスでは異色の存在だ。側廊下が非常に高いことから、古典ゴシックに見られるようなアーケードの上のトリフォリウムや高窓層は存在しない。側面にはフライングバットレスが無く、このため、側面の下半分がステンドグラスの無い壁面となっているが、ホールのような堂内のため、大変明るい。石柱が細いのも印象的で、堂内を広大に見せるのに一役買っている。空間処理は南方ゴシックのそれと非常に似通っている。何故フランス中部にぽつんと一つだけ、このような斬新な様式の大聖堂が建てられたのか、大変興味深いところだ。

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~壁面で完結している東端~

ずっと奥に進んで内陣から東端を見てみよう。後陣が周歩廊ではなく、壁面となっている。ポワティエ大聖堂と略同じ年に着工された初期ゴシックの代表例であるラン大聖堂も東端が壁面で完結している。

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~「磔刑」のステンドグラス~

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~拡大部分~

また、ポワティエ大聖堂には、12、13世紀の古いステンドグラスが数多く残されているが、特に有名なのが、東端壁面の中央に嵌め込まれた、「Crucifixion=磔刑」のステンドグラス。これを見るためだけにでも、ポワティエ大聖堂を訪れる価値は十分にある。12世紀半ばに制作された、現存するフランス最古のステンドグラスの一つであるが、高さ8.35m、幅3.1mと非常に巨大かつ、デザイン、構図、色彩と、どれを取っても類例の無い大変独創的な作品で、シャルトル大聖堂に残る数枚のロマネスク期のステンドグラスと並び称される、大変美しいステンドグラスだ。

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~中央の磔刑の図像、鮮やかな色彩~

「磔刑」は、絵画では数多く取り上げられている主題だが、ステンドグラスでは珍しいと思う。中央に磔にされたイエスが、青で縁取りされた赤い十字架の上に描かれる。赤い色は贖罪の血を表し、イエスの苦しそうな表情と合わせ、磔刑の場面をドラマチックに見せる。ちなみにここで使われている青は、「シャルトルブルー」と同系統の淡い青、血の赤とのコントラストが大変美しく、中世人の色彩感覚には驚くばかりだ。

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~下部の「復活」の場面と聖ペテロの磔刑~

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~「昇天」~

十字架の下にはイエスの墓が描かれているが、そこには灯がともるだけで遺影は無く、復活を表している。そして最上部には昇天するイエス=キリストが、舟形の光暈に乗り、両端には天使が、扇を広げたような形で手足を大きく伸ばし光暈を支えながら踊っているように見える。最初に「磔刑」が主題、と言ったが、ここでは、復活、昇天、といった贖罪の3大主題が描かれているのだ。加え、最下部には逆さに磔にされた聖人、つまり、ポワティエ大聖堂が捧げられた聖ペテロを表しており、2つの「磔刑」を描いている、ということでもある。近くで見ると描かれた全ての人物が生き生きと迫って来、離れて全体を眺めると、大胆な構図が鮮やかな色彩で浮かび上がる。実に素晴らしい芸術作品だ。

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~その他にも美しいステンドグラスが数多く嵌め込まれている~

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~聖ペテロと聖パウロのステンドグラス~

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~聖母マリアの彫刻~

ここポワティエには、ゴシックの大聖堂の他に、ロマネスク様式の傑作と呼ばれる教会堂もある(もしろ、こちらの方が有名)。ついでにお話するのはちょっと勿体無いので、きちんと改めてご紹介したい。



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楽しみにしています

ブログの再開気が付きませんでしたがうれしく思います。
これからも楽しみにしてますのでよろしくお願いいたします。
T.Machida

Re: 楽しみにしています

このようなマニアックなブログを楽しみにして頂いているなんて嬉しく思います。また定期的に更新していきたいと思いますのでお暇な時にでもご覧頂ければ幸いです。
プロフィール

クータンス

Author:クータンス
学生時代からフランスとゴシックの大聖堂に魅せられ、紆余曲折の人生を歩んだ結果、フランス永住の道を選択しました。
ここでは、フランスを中心としたゴシックの大聖堂を紹介したいと思いますが、フランスでは夜になると大聖堂は勿論のこと、殆どの歴史建造物がライトアップされます。また、単なるライトアップのみではなく、いくつかの大聖堂では、素晴らしい光のスペクタクルを見せてくれるところもあります。こういった大聖堂の写真も一緒に載せていきたいと思います。

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