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ルーアン大聖堂(夏のスペクタクルショー - その2)

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~夕陽を浴びる西正面~

この夏最後のスペクタクルショー見学はルーアン大聖堂。このショーは3年前にご紹介している(http://coutances.blog62.fc2.com/blog-entry-80.html)が、調べてみたら2部構成の内、一部を新しいテーマで開催しているとのことだったので、見に行ってきた。

大聖堂自体は、このブログを書き始めた頃に一度ご紹介している(http://coutances.blog62.fc2.com/blog-date-201004-1.html)が、細部については触れていなかったので、今回改めて少しご紹介させて頂きたい。

ルーアン大聖堂はフランスでも有数のフランボワイアン・ゴシック様式の傑作だが、西正面、南北扉口の彫刻も大変見事だ。まずは、Portail des Libraires=本屋の扉口、の下部にある四角形のレリーフから。ここには旧約聖書を主題にした150以上ものレリーフが彫られている。合間には以下写真のように、人間の頭部と動物の胴体がくっついた奇妙な生き物等、見ていて微笑ましいものが多い。

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~北扉口レリーフ(1)~

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~北扉口レリーフ(2)~

次は西正面。有名なフランボワイアンの装飾は以前ご紹介したが、扉口のタンパン彫刻も見事だ。

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~西正面中央扉口上部の切妻彫刻~

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~非常に繊細なフランボワイアンの装飾~

まず中央扉口はエッサイの家系樹。西正面タンパンに選ばれるのには珍しい主題だ。

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~エッサイの家系樹の彫刻~

そして聖ヨハネに捧げられた北扉口には、洗礼者ヨハネの斬首の場面が描かれる。左から右へ、ヘロデの饗宴、サロメの踊り、ヨハネの斬首、と場面が展開する。これも西正面に選ばれる主題として珍しいものだ。また、上部の透かし彫りも大変見事だ。

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~Portail Saint-Jean、聖ヨハネの門~

南扉口には磔刑と復活の場面。

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~南扉口のタンパン彫刻~

堂内はノルマンディー・ゴシックのため天井高は低い(28m)が、身廊側面のスクリーン処理が非常にユニークだ。身廊と側廊を結ぶアーケードの上部にさらに尖頭アーケードが乗っかり、その上にトリフォリウム、高窓層と、4層構成になっている。

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~四層構成の身廊スクリーン~

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~他ではあまり見られない珍しい構成~

また、側廊側から見ると、アーケード上部に幾本もの小円柱が付加され、立体的なアクセントとなっている。

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~小円柱群(1)~

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~小円柱群(2)~

円柱上部に人物の顔が彫刻として配置されているのも、ノルマンディー・ゴシック=英国のゴシックに通じるものがある。

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~愉快な円柱上部の彫刻~

翼廊のアーケードはかなり高く、垂直性が重視されている。

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~交差部の円柱が天井迄遮られることなく伸びる~

内陣もアーケードが外陣に比べ一層高くなっている。

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~内陣のアーケード~

中央交差部には採光塔が配置されている。

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~中央交差部~

ルーアン大聖堂は第二次世界大戦で甚大な被害を被ったため、数多くの素晴らしい中世のステンドグラスが破壊されてしまったが、少しながら残っている。中でも有名なのが、聖ジュリアンの物語のステンドグラス。フローベールはこの美しい焼絵硝子に着想を得て、「三つの物語」の中の聖ジュリアン伝を執筆した。下部左には、ステンドグラスを寄贈した魚屋が描かれている。

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~聖ジュリアンの物語のステンドグラス~

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~イエスの受難のステンドグラス~

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~南翼廊にある聖ロマンのステンドグラス、こちらは16世紀の作~

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~身廊から内陣を眺める

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~側廊~

久しぶりにルーアン大聖堂をゆっくり見学したが、やはり素晴らしい大聖堂だった。丁度20年前、会社からフランス語研修でルーアンに派遣され、毎日のように大聖堂を眺めていたことを思い出し、もう20年もの歳月が経ったのか、としばし感慨に耽っていた。

さて、夜のスペクタクルショーだが、3年前と印象派を主題にしたものは変わらず、「「Viking(ヴァイキング)」と題された部が今回新たに加えられた。

まず、極彩色に彩られた西正面が浮かび上がり、

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幕が開くように画面が開くと、

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暗転した西正面に蝋燭が灯される。

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続いてヴァイキングの船が現れる。

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炎がめらめらと立ち上がり、

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西正面が防壁で囲まれる。

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そこをヴァイキング達がよじ登り、

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金銀宝石が降り注ぐ。

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木の扉で閉ざされると、

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堂内が映し出される。

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南北の塔にステンドグラスが描かれ、

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中世の彩色された西正面が浮かび上がり、ショーは終了となる。

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~通常のライトアップ~

なかなか見応えのあるショーだった。今回は本当に久しぶりに堂内もゆっくり見学し、改めてルーアン大聖堂の素晴らしさを味わうことが出来て良かった。パリから僅か1時間半の距離、もっと頻繁に訪れたいと思う。



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オルレアン大聖堂(夜のスペクタクルショー)

オルレアンはパリから南に130km程、百年戦争の際、ジャンヌダルクが劣勢だったフランス軍を率いて英国軍から解放した町として有名だ。ここにもゴシック様式の大聖堂があるが、正式名称は、Sainte Croix、聖十字架大聖堂と言い、聖人に捧げられた大聖堂ではない。聖十字架とは、イエスが磔にされた十字架のことであるが、4世紀にコンスタンティヌス一世が、エルサレムで発見された聖十字架の木片を持ち帰り、これを聖遺物として捧げ初代の大聖堂(当時は司教座聖堂=大聖堂ではなく、たんなる教会堂であったが)を建立したことに由来している。

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~ジャンヌダルクが中心に映し出されたライトアップ~

全長140m、天井高32m、西正面の双塔高88mと、なかなか大規模な大聖堂だが、実は現在の大聖堂は二代目のゴシック大聖堂で、初代のものは13世紀後半に着工されたのだが、カトリック対プロテスタントのユグノー戦争の際、ユグノー(プロテスタント)の過激派により1568年に破壊されたしまった。フライングバットレスが素晴らしい大聖堂だった、とあるが、全く嘆かわしい愚かな話だ。ということで、二代目に当たる現在のゴシック大聖堂は1601年に着工されたもの。ゴシック様式ではあるものの、ゴシック期に建てられたものではないので、あまり関心が無く、今迄訪れたことがなかった。

ただ、今回夏の夜のライトアップショーをどこでやっているか調べていると、ここオルレアン大聖堂でも中々素晴らしいショーが開催されているというので、見に行ってきた。約20分に及ぶショーはジャンヌダルクを主題にしたもの。若干派手過ぎるとも思ったが、結構見応えがあって面白かった。以下に写真をご紹介しておく。

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こういった、夏の間見られるスペクタクルショーは全てプロジェクションマッピング。音響効果も付いてかなり大掛かり。これを無料で見ることが出来るのだから有難いし、どこの町もこうして観光客を呼び込むに熱心なのだから、フランスがいつまでも変わらず世界一位の観光大国であることも自然と納得させられる(この夏に行ったイングランドのゴシック大聖堂の夜のライトアップの貧相さと非常に対照的、やはりプロテスタントは遊び心が無いのか...)。


ストラスブール大聖堂(夜のスペクタクルショー)

夏のライトアップショーの第二弾はストラスブール大聖堂。こちらは数年前に鑑賞し、ブログでもご紹介したことがあるが、サイトで見てみたら、全く新しいショーを開催していたのでちょっと遠いが行ってきた。こちらは前回ご紹介したラン大聖堂はと違う、なかなか見応えがあった。

他の大聖堂のショーと異なるところは、西正面ではなく、側面が舞台となっていること。横に長いので映画のスクリーンのように映像の移り変わりが楽しめます。

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~最初は油絵のようなライトアップで~

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~青く浮かび上がり~

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~玉虫色の鮮やかな色彩が~

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~徐々に黄緑、紫へと変化し~

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~再び深い青に~

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~沢山の鐘が鳴り始め~

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~薔薇窓が現れる~

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~海底に沈み~

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~木々が茂り始め~

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~樹木で埋め尽くされると~

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~紅く燃え立ち~

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~冬の凍った白へと変わる~

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~聖人が映し出され~

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~フライングバットレスが浮かび上がり~

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~緑色で縁取られると~

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~下部から青、紫が浮かび上がり~

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~今度は赤へと~

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~クライマックス~

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~西正面は紫色に浮かび上がっていました~

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~拡大部分~

他にも素晴らしいスペクタクルショーを開催している大聖堂がまだあるので、終わるまでに出来るだけ行ってみようと思う。

ラン大聖堂のスペクタクルショー

今迄にも、大聖堂の西正面を舞台にした、光と音のスペクタクルショーを何度かご紹介しているが、最近、主要な大聖堂は争うようにどこでもスペクタクルショーを行うようになってきた。観光客誘致のためなのだろうと思うが、こういったショーを無料で見ることが出来るのだから、私達にとっては嬉しい限りだ。ということで、先週末、既にご紹介したラン大聖堂のショーを見に行ってきた。

以下写真を見て頂ければと思うが、今迄見てきたルーアンやランスのショーとは異なり、流行りの音楽にポップな映像が早いテンポで映し出されるもので、個人的には、ゴシック大聖堂を舞台にするショーにしては、趣きが無いように思われた。

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ポワティエ大聖堂

本当に久方降りのブログ再開の第一回目は、ちょっと変わったゴシック建築であるポワティエ大聖堂のご紹介から。

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~ポワティエ大聖堂西正面~

ポワティエはパリの南約350kmに位置し、ポワトゥ・シャラント地域圏の首府、ヴィエンヌ県の県庁所在地で、郊外も含めると約25万人の人口を有するフランス中部で有数の都市だ。近くにあるFuturoscopeという科学技術のテーマパークは、大人でも十分楽しめ、私も家族連れで何とか遊びに行っている。

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~西薔薇窓と天使~

ポワティエの町は、地理的な立地から、経済、軍事、宗教、政治といったあらゆる観点から重要な拠点で、紀元前からこの地に町が存在し、4世紀には既に司教座が置かれていた。軍事の観点からは、世界史に疎い人でも、フランク王国がイスラムのウマイヤ朝を撃退した、トゥール・ポワティエ間の戦い(732年)位は聞いたことがあるのではと思う。バブル世代の私達には、フランスが80年代後半に、日本の電化製品(特にビデオデッキ等)を標的にし、特定品目の輸入をポワティエの税関に限定するといった政策を導入し、この半ば嫌がらせのような保護主義的な対応を、現在の「ポワティエの戦い」だ、と揶揄していたことが、ポワティエの町の名前を聞いて思い出されるだろうと思う。

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~西正面と南塔~

さて、ポワティエ大聖堂=Cathédrale Saint Pierre、聖ペテロ大聖堂、であるが、シャルトルからアミアンに繋がる古典ゴシックの系統から外れる、プランタジネット様式を採用した大聖堂として知られている。ロワール地方のアンジェ大聖堂や町のその他の教会堂で多く採用されたことから、アンジェ様式とも呼ばれているが、一番の特徴は、非常に鋭角な高い交差ヴォールトだ。代表として知られるアンジェ大聖堂では、交差ヴォールトの頂点は起点より3.5mも高くなっている。この様式は殆どフランス中部に集中しているが、同地域では、ペリグー大聖堂やアングウレーム大聖堂のような、円形ドームを戴いたロマネスク様式の大聖堂があり、ここに新様式であるゴシックの交差ヴォールトが入ってきたことから、両方が交じり合ったような形態が生まれた、とされている。

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~簡素で剛健な造り、ゴシック初期の作品~

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~タンパンの最後の審判の彫刻~

その他にもいくつか、他のゴシック大聖堂には無い特徴があるが、西正面から順に見て行きたい。写真をご覧の通り、横に広く南北に未完成の塔を従える。どちらかと言うと簡素な造り、着工が1155年頃、まだまだゴシック初期の作品だ。

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~プランタジネット様式の堂内~

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~非常に高い側廊~

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~広い堂内~

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~すらりとした石柱~

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~フライングバットレスの無い側面~

しかし、堂内に入ると印象は一変する。そこには広大なホールのような空間が拡がっている。身廊から側廊に開くアーケードは非常に高い。前者と後者の天井高はそれぞれ、30mと24m、スペインの一部のゴシック建築を除き、このような構造のゴシック建築は存在しない。勿論、フランスでは異色の存在だ。側廊下が非常に高いことから、古典ゴシックに見られるようなアーケードの上のトリフォリウムや高窓層は存在しない。側面にはフライングバットレスが無く、このため、側面の下半分がステンドグラスの無い壁面となっているが、ホールのような堂内のため、大変明るい。石柱が細いのも印象的で、堂内を広大に見せるのに一役買っている。空間処理は南方ゴシックのそれと非常に似通っている。何故フランス中部にぽつんと一つだけ、このような斬新な様式の大聖堂が建てられたのか、大変興味深いところだ。

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~壁面で完結している東端~

ずっと奥に進んで内陣から東端を見てみよう。後陣が周歩廊ではなく、壁面となっている。ポワティエ大聖堂と略同じ年に着工された初期ゴシックの代表例であるラン大聖堂も東端が壁面で完結している。

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~「磔刑」のステンドグラス~

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~拡大部分~

また、ポワティエ大聖堂には、12、13世紀の古いステンドグラスが数多く残されているが、特に有名なのが、東端壁面の中央に嵌め込まれた、「Crucifixion=磔刑」のステンドグラス。これを見るためだけにでも、ポワティエ大聖堂を訪れる価値は十分にある。12世紀半ばに制作された、現存するフランス最古のステンドグラスの一つであるが、高さ8.35m、幅3.1mと非常に巨大かつ、デザイン、構図、色彩と、どれを取っても類例の無い大変独創的な作品で、シャルトル大聖堂に残る数枚のロマネスク期のステンドグラスと並び称される、大変美しいステンドグラスだ。

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~中央の磔刑の図像、鮮やかな色彩~

「磔刑」は、絵画では数多く取り上げられている主題だが、ステンドグラスでは珍しいと思う。中央に磔にされたイエスが、青で縁取りされた赤い十字架の上に描かれる。赤い色は贖罪の血を表し、イエスの苦しそうな表情と合わせ、磔刑の場面をドラマチックに見せる。ちなみにここで使われている青は、「シャルトルブルー」と同系統の淡い青、血の赤とのコントラストが大変美しく、中世人の色彩感覚には驚くばかりだ。

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~下部の「復活」の場面と聖ペテロの磔刑~

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~「昇天」~

十字架の下にはイエスの墓が描かれているが、そこには灯がともるだけで遺影は無く、復活を表している。そして最上部には昇天するイエス=キリストが、舟形の光暈に乗り、両端には天使が、扇を広げたような形で手足を大きく伸ばし光暈を支えながら踊っているように見える。最初に「磔刑」が主題、と言ったが、ここでは、復活、昇天、といった贖罪の3大主題が描かれているのだ。加え、最下部には逆さに磔にされた聖人、つまり、ポワティエ大聖堂が捧げられた聖ペテロを表しており、2つの「磔刑」を描いている、ということでもある。近くで見ると描かれた全ての人物が生き生きと迫って来、離れて全体を眺めると、大胆な構図が鮮やかな色彩で浮かび上がる。実に素晴らしい芸術作品だ。

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~その他にも美しいステンドグラスが数多く嵌め込まれている~

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~聖ペテロと聖パウロのステンドグラス~

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~聖母マリアの彫刻~

ここポワティエには、ゴシックの大聖堂の他に、ロマネスク様式の傑作と呼ばれる教会堂もある(もしろ、こちらの方が有名)。ついでにお話するのはちょっと勿体無いので、きちんと改めてご紹介したい。



プロフィール

クータンス

Author:クータンス
学生時代からフランスとゴシックの大聖堂に魅せられ、紆余曲折の人生を歩んだ結果、フランス永住の道を選択しました。
ここでは、フランスを中心としたゴシックの大聖堂を紹介したいと思いますが、フランスでは夜になると大聖堂は勿論のこと、殆どの歴史建造物がライトアップされます。また、単なるライトアップのみではなく、いくつかの大聖堂では、素晴らしい光のスペクタクルを見せてくれるところもあります。こういった大聖堂の写真も一緒に載せていきたいと思います。

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