スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

フランボワイアン・ゴシック

ゴシック様式は、ロマネスク様式の後を継ぐ形で12世紀に誕生、フランスを中心に発展し、ルネサンス文明が興ると、15世紀以降徐々にその姿を歴史から消すことになる。約4世紀以上に亘るゴシック様式の歴史の中で、いくつかの形態の進展を見ることになるが、その最後に位置するのがゴシック・フランボワイアンと呼ばれるものである。

フランボワイアンとはフランス語で「(炎が)燃えさかる」という意味で、「火炎様式」と呼ばれる。窓や装飾の文様が、それ迄円形等の単純・簡素であったものが、まさしく炎が波打ち燃えさかるような複雑な形の曲線で描かれるようになる。ただ、この様式はあくまで窓等の装飾・付加的な要素に用いられるものであって、建築の構造的な部分には全く関係の無いものである。ゴシック建築は誕生以降、高さ、明るさ、軽快さを求め、時代と共に様々な建築構造上の工夫がなされてきたが、フランボワイアンの発展するゴシック終期には、最早構造的挑戦は行われず、末端の装飾部分に関心が向かっていくことになる。最もこれは、百年戦争やペストにより経済が疲弊し、さらに規模の大きい建築物を建てる資金的余裕が無かったという、より実際的な理由もあったと思われる。

このフランボワイアン様式は、フランス北部に優れた作品が多い。それも大規模な大聖堂ではなく、中小規模の聖堂で多く見られる。以下にいくつかの代表例を紹介したい。

1.サン・マクルー聖堂(ルーアン)
ノルマンディー地方の首都ルーアンの町には、大聖堂、サントゥーアン聖堂、非宗教建築では裁判所など、数多くのゴシック建築が存在し、スタンダールはルーアンを、「ゴシック様式のアテネだ」とまで評しているほどであるが、中でも、サン・マクルー聖堂はフランボイアン・ゴシックの傑作として名高い聖堂である。

サン・マクルー聖堂は翼廊が無く、身廊も非常に短いので、円形のような形をしている特異な教会である。1437年に着工、1517年に完成している。半円形の正面に5つの入口を持つ。下の写真の正面入口の真上にある切妻装飾に火炎のような彫刻が見てとれるが、これがフランボワイアン様式の特徴である。小振りながらも非常に美しい聖堂である。

DSC00379.jpg
~サン・マクルー聖堂外観~

DSC00381.jpg
~真下から聖堂を仰ぎ見る~

DSC00721.jpg
~夕闇に聖堂の照明が灯されたところ~


2.コードベック・アン・コー聖堂

ルーアンからセーヌ河沿いに車で30分程下流に行くとコードベック・アン・コーの町に着く。町とは言っても人口2千人程度の、端から端迄歩いても5分程しかかからない小さな町であるが、ここにもフランボワイアン・ゴシック様式の傑作がある。

DSC00684.jpg
~聖堂外観~

DSC00683.jpg
~西正面~

DSC00687.jpg
~西正面拡大部分~

この聖堂には昔からの思い入れがある。大学2年の時、その時から既にゴシック芸術に魅せられ、図書館でゴシック関連の本を読み漁っていたのだが、その中の図版集に、この聖堂の尖塔の写真がフランボワイアン・ゴシックの例として出ており、ずっと見たいと思っていたのだ。実現したのは社会人になってから、休暇でルーアンの町に行った時、ローカルバスに乗り込み、コードベックの町まで行ったのである。町の人達が宇宙人でも見るような眼で私のことを見ていたのを懐かしく思い出す。

1426年に着工した聖堂は、規模こそ小さいものの、非常に良く統一されたフランボワイアン・ゴシックの作例とされており、アンリ4世は、あまりの美しさに、「余の王国の中で最も美しいシャペルだ」と言ったと伝えられている。内部はサン・マクルー聖堂と同じく翼廊が無く、長さ56m、幅21m。私がゴシック建築の中で最も美しいものの一つと思う尖塔は、高さ54m、八角形の塔の周りを繊細な小尖塔が囲み上昇し、透かし彫りの頂塔には、「コードベックの王冠」と呼ばれる3つの石の冠を頂く。

DSC00678.jpg
~聖堂内部、サンマクルー聖堂と同じく翼廊がない~

DSC00694.jpg
~西正面から尖塔を仰ぎ見る~

DSC00708.jpg
~コードベックの王冠~


3.アブヴィル参事会教会
アブヴィルはパリから北に約200km、英仏海峡から約20kmのところにある、人口25千人程の町で、パリとは違った、ベルギーやイギリスにあるような煉瓦造りの建物が多くみられる。ここにもフランボワイアン様式の聖堂がある。

規模こそ小さいものの、大聖堂を思わせるような堂々たる西正面を有する聖堂で、複雑繊細なフランボワイアン様式の装飾彫刻が至るところに施されている。

DSC02189.jpg
~優美、華麗な西正面~

DSC02203.jpg
~至るところにフランボワイアン様式の装飾が見てとれる~

ただ、残念なことに、この聖堂は横から見ると途中で途切れたように終わっている。財政難のため建設が未完成のままで終わってしまったためである。内部の構造も非常にユニークで素晴らしく、もし完成していたら、きっと有名な観光名所になっていただろうと思う。

DSC02207.jpg
~内部にもフランボワイアンの装飾が見られる~

DSC02228.jpg
~真下から仰ぎ見たところ、フランボワイアンの繊細な彫刻が良く分かる~

DSC02232.jpg
~西正面拡大部分~


4.ルーヴィエ、ノートル・ダム聖堂
パリからルーアン方面に100km程行ったところにある、運河の流れるこじんまりした綺麗な町である。ここにもフランボワイアン様式の傑作がある。ノートル・ダム(聖母)に捧げられた聖堂で、本体自体は13世紀初めに建設されたが、南側入口及びその周辺が16世紀に追加された絢爛豪華なフランボワイアンの装飾で埋め尽くされている。

DSC02273.jpg
~聖堂を南側面より見る~

DSC02246.jpg
~非常に繊細な装飾彫刻群~

DSC02272.jpg
~南入口、フランボワイアン装飾で埋め尽くされている~

DSC02253.jpg
~南入口、真下より眺める~

ここまでの豪華絢爛さは、他のフランボワイアン建築では類を見ないものである。フランボワイアンの装飾彫刻をよく「石のレース」と表現することがあるが、このルーヴィエの聖堂ほど、その表現が当てはまる建築物もないと思う。

DSC02277.jpg
~西側から南入口を見る、両端の彫刻柱が美しい~

DSC02278.jpg
~同拡大部分~

フランボワイアン様式はよく、過剰装飾などといって否定的な見方で評価されることが多いが、私は、この石という素材を忘れしてしまうような繊細さが、様々なゴシック建築の形態の中でも特に好きで、今回紹介させて頂いたような小規模な聖堂へも良く出かけていく。繊細さゆえに、このような規模でこそ特色を良く発揮するのであろうが、大規模な建築の中でも調和を保ちながら繊細な装飾を発展させることに成功した時、フランボワイアン様式は、妖艶な貴婦人のように、抗うことが困難な程の魅力を備えることになる。その代表例が、私の最も好きなルーアン大聖堂と、南仏のアルビ大聖堂である。この2つの大聖堂はまたの機会にゆっくり紹介させて頂きたい。
スポンサーサイト
プロフィール

クータンス

Author:クータンス
学生時代からフランスとゴシックの大聖堂に魅せられ、紆余曲折の人生を歩んだ結果、フランス永住の道を選択しました。
ここでは、フランスを中心としたゴシックの大聖堂を紹介したいと思いますが、フランスでは夜になると大聖堂は勿論のこと、殆どの歴史建造物がライトアップされます。また、単なるライトアップのみではなく、いくつかの大聖堂では、素晴らしい光のスペクタクルを見せてくれるところもあります。こういった大聖堂の写真も一緒に載せていきたいと思います。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。