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シャルトル大聖堂(1)

パリの南88kmのところにあるシャルトルの町の、中心部の丘に聳え立つのがシャトル大聖堂だ。フランス・ゴシック建築の華、シャルトル大聖堂は、その芸術的価値は当然のことながら、パリから近いことと、堂内の美しいステンドグラスから観光名所としても有名で、恐らく知らない人はいないだろうと思う。

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~西正面と尖塔~

シャルトル大聖堂を題材にした芸術作品は数多くあり、中でも、フランス19世紀末の神秘主義・デカダン派作家ユイスマンスは、「大伽藍」という小説で、シャルトル大聖堂を主人公(勿論、人間の主人公も登場するのだが、読まれた人はお分かりの通り、この小説の真の主人公は明らかにシャルトル大聖堂である)にしてしまったほどだ。日本にも、シャルトル大聖堂に関する本は山ほどあり、いくらでも大聖堂のことを知ることができる。あまり専門的でなく、かつ楽しく読めるものでは、黒江光彦著の「フランス中世美術の旅(新潮選書、今は新刊では出ていないかも知れない)」が、大変叙情豊かでかつ詳しく、シャルトル大聖堂の歴史・建築史上の意義、内部のステンドグラスの事などを紹介しているのでお勧めである。

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~夕陽を受ける西正面~

フランスのゴシック大聖堂は殆ど全て訪ねて回ったが、一度行ったきりのところもあれば、好きで何度も訪れている大聖堂もある。中でも、滞在していたルーアンを除くと、パリから近く、行きやすいという理由もあるが、一番訪れているのがこのシャルトル大聖堂だと思う。
ご存知の通り、大聖堂は司教座聖堂のことであり、つまり、司教のいる町の聖堂であるから、都市にあるのが通例である。パリは勿論、アミアン、ルーアン、ランス、ストラスブール等々、大聖堂のある町は今でも大きな都市であるところが殆どだ。これに対し、シャルトルの町は、昔は学芸の栄えた豊かな町だったが、今では人口4万人程の小規模な都市(とは言っても、ユール・エ・ロワール県の県庁所在地ではあるのだが)となっている。そのおかげと言っては失礼だが、町の規模に対する大聖堂の大きさは他の都市に比べはるかに印象的で、中心部の丘の上に建っていることもあり、遠くからでも大聖堂の尖塔がはっきり見える。

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~街中から大聖堂の尖塔が見える~

シャルトルに着き、丘の頂上に向かう、中世の街並みが残る幅の狭い路地を歩いていく。ところどころ、両側の家々の間から、圧倒的な大きさでもって大聖堂の一部が見えてくる。頂上に到着すると視界が一気に開け、シャルトル大聖堂の全容が姿を現す。

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~南入口と骨太な大控壁~

ランス、アミアンと共に、3大ゴシック大聖堂と称されることが多く、また、建築史上、パリ北部近郊のサンドニ大聖堂と並び、ゴシック様式の創生期の大聖堂に位置づけられている。ただ、西正面のみがロマネスク様式、これは、同様式で建設された大聖堂が大火災により消失し、西正面のみが焼け残ったのだが、その後開始されたゴシック様式による大聖堂にこの西正面がそのまま使われることになったからだ。なので、シャルトルの西正面には他のゴシックの大聖堂西正面にあるような数多くの装飾は見られず、どちらか言えば素朴な出で立ち、入口の彫刻も、ゴシック様式の南北入口の写実的な彫刻に比べると、まだまだ簡素である。聳える2本の尖塔の内、南塔もロマネスク様式、北塔のフランボワイアン様式の繊細かつ豪華な装飾に比べると何とも素朴だ。とは言うものの、この不均整が西正面に不思議な存在感と魅力を与えているのは紛れもない事実で、もし、ロマネスク、ゴシックのどのらかの様式の塔が2つ屹立していたら、端正さはあるものの、個性の無い、面白くない西正面に仕上がっていたと思う。南塔は105m、北塔は113m、青空を背景に空高く聳える様は言葉で言い表せない程美しい。

大聖堂の建設は前身のロマネスク様式の大聖堂が火災で消失した1194年から始まり、1220年には大部分が完成している。これは大聖堂の建設期間としては著しく短い期間で、全体的に、初期のゴシック様式で非常に良く統一されている。フライングバットレスはまだまだ大きく無骨で、大控壁も非常に大きい。窓もロマネスクの聖堂に比べれば大きいが、ランスやアミアンのより後期のゴシック建築に比べると随分小さいのが分かる。とは言うものの、このシャルトル大聖堂が他のより洗練された大聖堂に劣るかと言えば全くそんなことはなく、寧ろ逆で、生まれたばかりのゴシック様式が、これから広がり発展していく創生期の力に満ち溢れており、スケール面、建築技術面でシャルトルを凌ぐ他の大聖堂をもってきても、全く敵わない存在感、魅力を湛えている。実は私もこれを書こうとして本当に久しぶりにシャルトル大聖堂を見にきたのだが、その圧倒的な存在感に改めて驚かされてしまった。フランス人にとっては、数ある大聖堂の中で、やはりシャルトル大聖堂が心の故郷になるのだろうと実感した。

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~夕闇の迫る中、西正面がライトアップされる~

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~夕闇を背景にした西正面~

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~夜空に向かって伸びる線が美しい~

他の大聖堂同様、ライトアップされたシャルトル大聖堂も大変美しい。特に夕陽が沈み、空が段々と暗くなり、深い青から朱を含んだ紫へと変化する中、西正面の歳月に洗い流された白い壁面に光が照てられ、浮かび上がる様は鳥肌が立つ程美しい。側面は淡いオレンジ色の光が灯り、薄い緑青色の屋根と実に美しい対比を見せてくれる。丘の下に降り、少し遠くから眺めると、暗闇の中に大聖堂の全容が照らし出され、時間が停止したような錯覚に陥り、吸い込まれそうになる。今回久しぶりに来てみて改めて思った、個人的な好みで好きな大聖堂は他にもいくつかあるが、このシャルトル大聖堂の存在感に勝るものはどこにもない、と。

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~側面のオレンジ色の照明と緑青色の屋根との対比~

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~夕闇のライトアップと緑青色の美しい対比~

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~西正面尖塔と側面拡大部分~

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~ライトアップされた大聖堂全景とその上に浮かぶ三日月~

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~後ろから見た大聖堂のライトアップ~

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~少し離れてライトアップされた大聖堂を見る~

ところで、4月末から秋にかけて、シャルトルの町でもイルミネーションのショーが繰り広げられ、町の主要な建造物が鮮やかにライトアップされる。大聖堂もいつもとは異なる、赤や青、黄等の極彩色な光で染められることになるのだが、何故かここの大聖堂の光のショーには感銘を受けない。今迄ご紹介した、ルマン、アミアン、ルーアンの各大聖堂での光のショーはそれぞれ大変美しいと思うのだが、シャルトルのだけは安っぽい見世物のように思えてしまう。ただ単に好みの問題なのか、それともシャルトル大聖堂が他の大聖堂には無い神々しさを持っているため、そのような人工的なショーを受け付けないのか、ご参考迄に今度写真を撮ってきてお見せしたいと思う。

なお、シャルトル大聖堂の美しさの真髄は、外観よりは堂内の窓という窓に嵌め込まれたステンドグラスにある。中世の質の高いステンドグラスをこれ程多く残している大聖堂はシャルトルだけである。これを紹介するとかなり長くなってしまうので次回改めて紹介させて頂く。

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プロフィール

クータンス

Author:クータンス
学生時代からフランスとゴシックの大聖堂に魅せられ、紆余曲折の人生を歩んだ結果、フランス永住の道を選択しました。
ここでは、フランスを中心としたゴシックの大聖堂を紹介したいと思いますが、フランスでは夜になると大聖堂は勿論のこと、殆どの歴史建造物がライトアップされます。また、単なるライトアップのみではなく、いくつかの大聖堂では、素晴らしい光のスペクタクルを見せてくれるところもあります。こういった大聖堂の写真も一緒に載せていきたいと思います。

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