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ラン大聖堂

復活祭の4連休を利用してラン大聖堂を見に行ってきた。ランの町はパリの北東約120km、ピカルディー地方エーヌ県の県庁所在地だ。とは言うものの、人口約26千人、日本の感覚からすると大変小さな町だ。

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~ラン大聖堂全景~

パリからは高速道路が通っておらず、国道を走っていくのだが、この季節のフランスでのドライブはとても快適だ。空も大地も灰色一色の長いモノトーンな冬から、芽を出した葉の緑や菜の花畑の黄色が眩しい色彩豊かな季節へと一転する変わり目の時期で、晴れた日も多くなり青空との対比も爽やかで、また明るい季節が巡ってきた、というのを実感することができる。

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~西正面上層から見たランの町並~

何も遮るものの無い平らな大地を真っすぐ走る道路を走ること約1時間半、頂上に家々が犇めく小高い丘が見えてくる。ランの町だ。今でこそ小さな町だが、中世には宗教、政治の中心地として大いに栄えていた。5世紀には既に司教座が置かれ、カロリング朝時代には王が居を構えしばしこの地に滞在していたと言う。11~13世紀に最も盛隆を極め、当時人口1万人を超えていたというのだから凄い。アミアンの町にも匹敵する規模だ。

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~丘の頂上に君臨する大聖堂~

こういった町の勢力、財力が現存するラン大聖堂を建立する力となったことは言うまでもない。小高い丘の上に町並を統べるように君臨するラン大聖堂ははるか遠くからでもその尖塔を仰ぎ見ることができる。建設が開始されたのは1155年。丁度サンドニ大聖堂の内陣が献堂された直後、シャルトル大聖堂がゴシック様式で着工される1194年より大分前のことであり、まだまだゴシック建築が初期の頃の作品だ。具体的な特徴を追っていこう。

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~垂直性より水平性を重視した内部構造~

まず、天井高が24mと、シャルトルの36.5mと比べてかなり低いのは勿論、サンドニの32mと比べてもまだ低く、前回ご紹介したロマネスク様式のコンク教会堂の天井高より僅か2m高いだけである。また、アーチが殆ど円形になっており、尖頭アーチを採用しているところでもかなり緩やかでランスやアミアン等の鋭角な尖頭アーチと比べて、まだまだロマネスク的要素の残っていることが見て取れる。その他にも初期ゴシックの特徴となっているのが、側廊の上部に、シャルトル以降は消滅してしまう、トリビューンと呼ばれる廊下だ。また堂内の円柱が途中で何度もリングで分断され、盛期以降に見られる垂直性も、天井高の低さと相俟って、未だ見ることができない。確かにゴシック建築の特徴である、交差ヴォールト、フライングバットレス、ステンドグラスといった物全てを備えてはいるものの、未だ未だ洗練されているとは言えず、一時代前のロマネスク様式と比べて似通った部分を見出すことも多い。

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~奥行きのある構成が見て取れる~

とは言え、全長110.5m、西正面の塔の高さ60.5mと、ロマネスクの教会堂と比べてその巨大さは圧倒的で、ここを揺り籠としてパリ、シャルトル、ランスへとゴシック様式は大きく発展していくことになる。また、塔が西正面の南北の塔、中央の塔、そして南北翼廊にそれぞれ1基ずつ、計5つの塔を有することも大変特徴的だ。これら全てが中を刳り抜いた空洞のようになっており、かつ、四隅にもさらに細い円柱で取り囲まれた空洞の縁取りの柱が配置され、非常に軽快な印象を見る者に与える。もう1点、ラン大聖堂の特異な点は、東側の内陣後部が円形の放射状礼拝堂になっておらず、壁面で完結していることだ。ここには薔薇窓と3つのランセット窓が配置されている。薔薇窓は西正面、北側翼廊、そして東端、と3つ存在し、いずれにも13世紀の美しいステンドグラスが嵌め込まれている。

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~西正面、丸みを帯びたアーチ、簡素な塔の形態が分かる~

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~南北翼廊の塔~

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~内陣と東端~

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~東端の薔薇窓~

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~北翼廊薔薇窓~

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~西正面薔薇窓、下部がパイプオルガンで隠されている~

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~数は少ないながら、13世紀の美しいステンドグラスも残されている~

ところで、今回は大変興味深いカイドツアーに参加することができた。普段ではまず上ることができない、トリビューン探訪のツアーが開催されていたのだ。1日18名限定とのことで、前日に家族4名分予約して待ち合わせの時間に大聖堂横の観光案内書に行く。そこで他の参加者と合流し、ツアーに出発。最初は西正面南塔上部に上らせてくれたが、「本当は事前に許可を取らないとダメなんだけどね」と言って、西正面中央部分の、南北の塔を結ぶ最上部の通路に上らせてくれた。ちょっと身を乗り出せば落ちそうな感じで、スリルもあり、また、ランの町とその向こうに広がる平野を地平線迄見渡すことができ、大変心地良い気分を味わうことができた。

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トリビューンから身廊を見下ろす~

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南翼廊トリビューンより北翼廊薔薇窓を見る~

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北翼廊と交差部~

また、南北の塔を近くで見ると、四隅にそれぞれ、大きな牛の彫刻が2体ずつ鎮座している。伝説によれば、ラン大聖堂の石材は近隣に良い石切り場が無く、ここから35kmも離れたところからはるばる運んでいたのだが、ある日真っ白な牛が石を運び上げ、そのまま天に上っていった、ということだ。「でも本当のところは多分」とガイドさんが話してくれたのは、当時、ランの町には肉屋の組合が強い力を持っていたことから、恐らく多大な寄進を行い、感謝の意を込めて(あるいは広告の意を兼ねて)牛の彫刻が飾られたのであろう、ということだった。

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~西日を浴びる西正面~

その後、トリビューンへ。思ったより幅が広く3m程もあった。いつもは下から内部を見上げるだけだが、上から堂内を見下ろす感覚は普段とは全く違い、大変貴重な経験をさせてもらった。こういうツアーは是非他の大聖堂でもやって欲しいと思う。

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~ライトアップされた西正面双塔、簡素な構成と牛の彫刻のシルエットが見える~

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~ライトアップ(2)、交差部と北翼廊のトマスベケットの塔~

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~ライトアップ(3)、西正面を見上げる~

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~ライトアップ(4)、西正面~

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~ライトアップ(5)、南翼廊越しに西正面双塔を見る~

ライトアップされたラン大聖堂も大変美しかった。他の大聖堂のようなクリーム色の照明ではなく、真っ白な照明で照らし出され、骨格のような塔の構造の効果もあり、夜空に浮かび上がるような美しさを見せてくれた。初夏の休日の大変爽やかな小旅行だった。

DSC05135.jpg~ライトアップされた大聖堂全景~

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プロフィール

クータンス

Author:クータンス
学生時代からフランスとゴシックの大聖堂に魅せられ、紆余曲折の人生を歩んだ結果、フランス永住の道を選択しました。
ここでは、フランスを中心としたゴシックの大聖堂を紹介したいと思いますが、フランスでは夜になると大聖堂は勿論のこと、殆どの歴史建造物がライトアップされます。また、単なるライトアップのみではなく、いくつかの大聖堂では、素晴らしい光のスペクタクルを見せてくれるところもあります。こういった大聖堂の写真も一緒に載せていきたいと思います。

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