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バイユー大聖堂(ノルマンディー)

夏の夜のスペクタクル第二弾は、ルーアンと同じくノルマンディーにあるバイユーの町の大聖堂。

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~バイユー大聖堂西正面尖塔~

ここは初めてご紹介するところなので、まずは簡単にバイユーの町について。ノルマンディー地方は実は結構広く、高ノルマンディー地域圏(Haute Normandie)と低ノルマンディー地域圏(Basse Normandie)の2つの地域圏から成る。前者の首府がルーアンで、バイユーは後者にあるカルヴァドス県に属する。ちなみに低ノルマンディー地域圏の首府はカン(Caen)という町で、ゴシックの先駆けを示す素晴らしいロマネスクの修道院がある。また、カルヴァドス県の名前となっているカルヴァドスはご存じ林檎の蒸留酒で、この辺りが生産地となっている。地元に行けば、結構安くで買うことが出来る。

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~鄙びた町の風景~

バイユーの町は小さいながら(人口約13千人)も鄙びた風情のある美しい町で、英仏海峡から僅か数キロ内陸にあることから、英国人の観光客も多く、街中を歩いているとよく英語を耳にする。この町で最も有名なのは、大聖堂ではなく、ユネスコの世界遺産にもなっている「バイユーのタペストリー」だ。11世紀のノルマンディー公ウィリアムのイングランド征服を描いた全長70mにも及ぶ非常に長いタペストリーで、略千年も前の刺繍であるにも拘らず、今でも美しい色合いを残している。ちなみにこのタペストリーは元々バイユー大聖堂に飾られていたものだ。

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~斜め後ろから見たところ~

ところで、ノルマンディー地方は今でこそ、美味しい食べ物と穏やかな景色で人々を惹きつけているが、第二次大戦中は、ドイツ軍に占領され、かの有名なノルマンディー上陸作戦の舞台となり、多くの町が甚大な被害を被った地域でもある。至る所に被害者の記念碑等が建っており、ここバイユーにもノルマンディー上陸作戦記念館がある。300万人近い兵員が動員された、第二次大戦上最大の上陸作戦は、ノルマンディー制圧に2か月を要したが、バイユーに関しては、決行日である1944年6月6日の翌日に、連合軍によりドイツ軍から解放されたこともあって、戦争の被害を殆ど受けなかった数少ない町となっている。ちなみに、お隣のマンシュ県にあるサン・ロー(Saint-Lô)という町等は、ノルマンディー上陸作戦により、町の90%が破壊されるという、甚大な被害を受けた。結果、クータンス大聖堂と並び、ノルマン・ゴシックで最も美しいと称されたサン・ロー大聖堂の尖塔が、基部のところから爆撃により完全に崩壊してしまった。この尖塔は戦後も、「歴史の悲劇を繰り返さないため」修復されず、そのままの姿を残している。今では白黒の写真でしか在りし日の姿を見ることが出来ない。サン・ロー大聖堂はまたいつかご紹介させて頂くとして、現在の姿と、在りし日の白黒写真を以下に載せておく。愚かな歴史は本当に繰り返してはならない。

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~大分ぼやけているが、サン・ロー大聖堂の昔の写真、すっと伸びる尖塔が美しい~

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~見る影も無い現在の西正面~

さて、少し話がずれたが、バイユー大聖堂に戻ろう。典型的なノルマン・ゴシックの大聖堂で、低ノルマンディー地方では、クータンスと並び美しいゴシック大聖堂に数えられる(ただ、繰り返しになるが、先のサン・ロー大聖堂がもし今でも元の姿で残っていたなら、クータンス、バイユーと共に、「ノルマンディーの3貴婦人」などと言って観光客を集めていたかも知れない、本当に残念だ)。

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~全景、華麗な外観~

ノートルダムに捧げられた大聖堂は、ゴシック様式到来前の1077年に奉献されたことから、今でもクリプトや西正面尖塔の一部等にロマネスク様式の部分が残っている。その後2度の火災を経て修復、新たな建設が続けられ、ノルマン・ゴシックの特徴を取り入れながら、13世紀半ばには大部分が完成する。

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~西正面~

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~尖塔を斜め後ろから見る~

ノルマン・ゴシックの特徴は、以前セー大聖堂をご紹介した際にも話したが、垂直に伸びる直線の多用による上昇感の強調、低い天井、中央交差部の採光塔、といったものが挙げられるが、バイユー大聖堂はそれら全てが備わった典型的なノルマン・ゴシック様式の大聖堂だ。全長102m、西正面尖塔高73-75mと、低ノルマンディー地域圏では最も大きな大聖堂の一つとなっている。

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~遠くから見るとロマネスクの面影を残しているのが分かる~

個別に特徴をみていこう。まずは西正面。大きな控え壁で垂直性を表現した骨太な構造がすっと伸びる尖塔へと繋がる。装飾は殆どなく、シンプルな垂直線の強調がノルマン・ゴシックの特徴となっている。一方、尖塔上部はロマネスク様式の特徴を備えた簡素な造り。扉口は計5つあるが、両端の2つは疑似ポーチで、実際には3廊式の大聖堂だ。

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~堂内~

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~外陣身廊、大きなアーケード、トリフォリウムが水平性を強調している~

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~愉快な彫刻~

内部もノルマン・ゴシックの特徴を良く表している。天井が低く、奥行のある構成。まず外陣から見てみよう。主廊下部のアーケードが尖頭アーチでなく、円形となっており、円柱も非常に太い。また、壁面が多くの彫刻装飾で埋め尽くされており、この辺りはノルマン・ゴシックというより、むしろ英国の初期ゴシック様式に近い(ハリーポッターの撮影が行われた、北部イングランドのダラム大聖堂なんかと良く似ている)。次の層のトリフォリウムは非常に低く下部のアーケードと高窓層を隔てて奥へと延び、垂直性よりも水平性を重視する形となっている。高窓層の窓は非常に大きく、側面をアーケードと高窓層で2部するような構成になっている。

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~内陣、完全なゴシック~

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~周歩廊から身廊を見上げる~

一方、内陣は外陣と打って変わって完全なゴシック様式。下層アーケードも尖頭アーチを採用して高く、円柱は天井迄途切れることなく伸び垂直性を強調している。トリフォリウムも外陣に比べはるかに大きくなり、高窓層へと連なる。この辺りは13世紀になってから建設されており、時代の変遷が良く分かる。

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~周歩廊礼拝堂~

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~数は少ないが美しいステンドグラスも嵌め込まれている~

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~ステンドグラス(2)~

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~光と闇の対比~

さらに奥へと進むとレヨナン式の放射状礼拝堂が迎えてくれる。外に回って後陣を見るとフライングバットレスとの調和が大変美しい。

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~交差部~

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~翼廊礼拝堂~

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~翼廊部分~

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~西正面尖塔と中央採光塔~

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~後陣の放射状礼拝堂が美しい

中央交差部の採光塔はフランボワイアン様式で15世紀に建設されたものを19世紀に修復したもの。緑青色のドームが冠され、繊細で華麗な姿を見せてくれる。この中央採光塔は、フランスのゴシック大聖堂中でも、最も美しいものの一つだと思う。

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~ライトアップ(1)~

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~ライトアップ(2)~

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~ライトアップ(3)中央交差部と採光塔~

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~ライトアップ(4)緑色の光が幻想的で美しい~

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~ライトアップ(5)~

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~ライトアップ(6)~

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~ライトアップ(7)翼廊~

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~ライトアップ(8)~

それ程大規模ではないが、華麗で美しいバイユー大聖堂は、これを見るためだけでも、わざわざ訪れる価値があると思うが、夏の間に催される夜のライトアップショーは、一泊してでも見る価値のあるものだ。7月中旬から8月末まで、火、水、土のみ行われるこのショーは、大聖堂の南側面を色取り取りの光で照らし出す、というもの。赤から紫、緑と徐々に色彩が変化する様はとても幻想的で、まるでお伽の世界へと入り込んだような気分になる。

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~ライトアップ(9)

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~ライトアップ(10)ちょっと幻想的過ぎてディズニーランドみたい~

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~ライトアップ(11)~

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~西正面は通常のライトアップ、こういうシンプルなのも美しい~

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~同じく西正面ライトアップ~

ただ、あまりに色彩が鮮やか過ぎて、ディズニーランドのショーを見ているような気分にも少しなったりするが。それでも素晴らしいスペクタクルには変わりない。この時期日が暮れるのは21時半~22時頃、地元のレストランで、地元の林檎酒シードルを飲みながら、名物のガレットを食べてライトアップが始まるのを待つ。値段も安くて美味しい。レストランの雰囲気も素朴で、こういった一時が、お金を掛けずに気軽に味わえるのもフランスの良さだろう。


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プロフィール

クータンス

Author:クータンス
学生時代からフランスとゴシックの大聖堂に魅せられ、紆余曲折の人生を歩んだ結果、フランス永住の道を選択しました。
ここでは、フランスを中心としたゴシックの大聖堂を紹介したいと思いますが、フランスでは夜になると大聖堂は勿論のこと、殆どの歴史建造物がライトアップされます。また、単なるライトアップのみではなく、いくつかの大聖堂では、素晴らしい光のスペクタクルを見せてくれるところもあります。こういった大聖堂の写真も一緒に載せていきたいと思います。

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