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レオン大聖堂(スペイン)

レオンの町は、中世にレオン王国の首都として栄えていたことから、時代毎に貴重な歴史建造物を有する。ルネサンス期のものはパラドールで紹介したサン・マルコス修道院、ロマネスク様式でも天井画で有名な聖イシドロ教会がある。そしてゴシック様式では、レオン大聖堂が町の中心部に堂々と聳えている。

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~フランス式のゴシック建築、レオン大聖堂~

レオン大聖堂は間違いなく、ゴシック建築としてはスペインで最も洗練された、美しい大聖堂だ。ただ、これはフランスのイル・ド・フランスに端を発するフランス・ゴシックの延長線上としてとらえた尺度で見た場合であって、そういった意味では、ただただ巨大で、むしろ鈍重な印象を受けるトレドやセビリアの大聖堂の方が、直截的に感覚に訴える、スペインらしいゴシック建築と言えるのだろう。このスペイン・ゴシックらしからぬレオン大聖堂は、スペインになければ、フランスのゴシック大聖堂と間違ってしまうと思う位フランス的だ。それもそのはず、着工が13世紀半ばということもあり、平面はランス大聖堂を、空間処理はアミアン大聖堂を参考にして設計されたと言うことだ。

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~壁面を埋めるステンドグラス群~

長さ109m、天井高29mと、やや小振りだが、堂内に入って受ける印象は、むしろシャルトル大聖堂のような初期ゴシックよりも圧倒的だ。まず壁面を占める窓の多さに驚かされる。そして何よりも素晴らしいのは、窓という窓に嵌め込まれたステンドグラス群だ。13世紀のものを中心に、シャルトルやブールジュと同系統の、深い色合いが美しいステンドグラスで埋め尽くされている。壁面に対する窓の割合はシャルトルよりも多いのであろう、より強く、光の洪水の中に身を置いているという感覚にとらわれる。やや小振りなアミアン大聖堂の窓全てにシャルトル大聖堂にあるようなステンドグラスが嵌っている、と言うと感じが掴めるだろうか。

DSC03810.jpg~壁面より窓の面積の方が大きい~

DSC03884.jpg~窓と柱のみの壁面構成~

DSC03903.jpg~強い日差しと鮮やかなステンドグラスの色により堂内は明るい~

また、フランスの大聖堂のステンドグラスと異なるのは、黄や緑などの鮮やかな色硝子が多いことで、それらが南の強い陽光を受け、深みを持ちながらも明るく鮮やかに、虹色の色彩で堂内を満たす様は圧巻で、神秘的ではあるものの、そこには北フランスの大聖堂にあるような薄暗さ、冷厳さというものは感じられない。躍動感に満ちた、明るい光の交響楽があるのみだ。

DSC03816.jpg~内陣上部ステンドグラス~

DSC03814.jpg~同拡大部分~

描かれる主題もスペインらしく、キリスト教に関するものばかりではなく、側廊に嵌め込まれた窓には植物をモチーフとした色硝子が、様々な色彩で鮮やかに描かれている。

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~植物を題材にした色彩豊かなステンドグラス~

DSC03883.jpg~同拡大部分~

他にも、同じ主題を扱うステンドグラスでも、フランスとスペインとの表現の違いと見るのも面白い。内陣上部に、エッセイの樹のステンドグラスが嵌め込まれているが、シャルトルの青と違い、黄色を基調をしたそれは、縦長の楕円が上に向かって連なり、より垂直性を与える構図になっている。

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~内陣上部に嵌め込まれたエッセイの樹のステンドグラス~

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~同じく内陣上部の聖人のステンドグラス~

薔薇窓も南北翼廊、西正面と、フランスの大聖堂と同じく3つあるが、最も素晴らしいのは西正面のそれで、黄、緑、赤、青等極彩色の色硝子が嵌め込まれ、西日を受けると、玉虫色の光の洪水が幾条もの線となって堂内に注ぎ込み、満たしていく。鮮やかではあるものの、軽く、けばけばしい光では一切なく、深く温かみのある虹色の絨毯が下りて来ているようで、その中に包まれると、キリスト教徒ではないものの、神の懐に抱かれているとでも言うような感覚に陥ってしまう。

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~翼廊の薔薇窓~

DSC03856.jpg~西正面薔薇窓~

DSC03853.jpg~拡大部分、緑や黄の明るい色彩が美しい~

壁面をステンドグラスで満たすということがゴシックの発展過程の一つであるなら、レオン大聖堂はその意味においての最も完成形に近い形なのではないかと思う。ランスやアミアンが、シャルトルよりもより多くの窓による壁面を目指しながらも、戦禍による損害などの理由はあるにせよ、寒々しい磨り硝子が大部分を占めてしまっている中、(ゴシック様式発祥の地である)フランスではなく、(全体としてゴシック発展過程の亜流ととらえられる)スペインに、壁面の大部分を窓に代え、そこにことごとくステンドグラスを残しているゴシック大聖堂が存在するというのはなんとなく皮肉なものではあるが。

DSC03916.jpg~繊細な西正面入口の彫刻~

レオン大聖堂は内部だけでなく、外観も美しい。西正面のデザインはルーアン大聖堂のように、内部構造の外側にはみ出して南北の尖塔を抱く。また、入口彫刻も繊細で躍動感に満ち、ここでもフランス・ゴシックの色濃い影響を垣間見ることができる。すらっと天に聳える様は、どっしりと大地に根を張ったようなトレド大聖堂などとは大きく異なり、同じゴシック建築とは思えないほどだ。

DSC03948.jpg~夕闇にライトアップの火が灯る~

夜間のライトアップも美しい。石灰岩質の白っぽい石が光に照らし出され、漆黒の夜空に映える。ただ一つ残念なのは、スペイン旅行のところで何度か紹介している堀田善衛氏が、「スペイン断章」というエッセイの中で、レオン大聖堂の夜間のライトアップについて述べている件があるのだが、外からの照明を落とし、中からステンドグラスを浮かび上がらせるライトアップがなされていたことがあるそうなのだ。その様子を、「夜の暗さに、石の部分は全部消えて色彩ガラスだけが光り出」る、と述べている。私もこれを是非見たいと思い、夏、冬と季節を変えて訪れているのだが、未だにこのようなライトアップには出会ったことが無い。昔はやっていたが今はやらなくなったのか、一度は暗闇に浮かび上がる、色取り取りの蛍のようなステンドグラスの光の群れを見てみたいと思っている。

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~ライトアップされた西正面~

DSC03963.jpg~西正面を見上げる~

DSC03965.jpg~後陣から見る~
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プロフィール

クータンス

Author:クータンス
学生時代からフランスとゴシックの大聖堂に魅せられ、紆余曲折の人生を歩んだ結果、フランス永住の道を選択しました。
ここでは、フランスを中心としたゴシックの大聖堂を紹介したいと思いますが、フランスでは夜になると大聖堂は勿論のこと、殆どの歴史建造物がライトアップされます。また、単なるライトアップのみではなく、いくつかの大聖堂では、素晴らしい光のスペクタクルを見せてくれるところもあります。こういった大聖堂の写真も一緒に載せていきたいと思います。

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