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ジゾール参事会教会堂

パリの西側にあるノルマンディー地方には、前にもいくつかご紹介したが、中小の規模ながら、なかなか素晴らしいゴシックの教会堂が沢山存在する。今回は、ちょっとしたピクニックがてら、パリから西北西に70km程のところにあるジゾール(Gisors)という町に行ってきた。

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~非常にユニークな外観のジゾール参事会教会堂~

ここには、もう15年程前になるが、会社からフランス語研修でルーアンに来ていた時の学校の先生に、ゴシック建築が大好きだ、と言ったら、「だったらジゾールに行ってみろ、あそこにはゴシックとルネサンスが真ん中でくっついた面白い聖堂がある」と聞いてから、ずっと頭の片隅には残っていたのだが、なかなか機会が無く来ることができていなかったところだ。15年経ってようやく、「ゴシックとルネサンスがくっついた」聖堂がどんなものか見ることができたわけだ。

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~ジゾール城主塔~

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~主塔を取り囲む城壁~

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~15世紀の洗濯場跡なんてのも残っている~

このユニークな聖堂を紹介する前に、簡単にジゾールの町を紹介していきたい。今では人口1万人強の小さな町だが、中世には非常に重要な役割を担っていた。というのも、この町は、当時のフランス王国とノルマンディー公国の国境に位置していたからだ。1180年には、フランスのフィリップ2世とイングランドのヘンリー2世との間で、ジゾール条約が結ばれ、それまで永きに亘り続いていたフランス王国とノルマンディー公国との間の戦争に終止符が打たれた。また、1188年には第三次十字軍がここジゾールから出発してもいる。こういった背景から、中世の建造物として、ジゾール城が残っているが、これはロワール等にある貴族の館としての「お城」ではなく、戦闘のための「要塞」として活躍していた城だ。周りには城壁が築かれ、ところどころに物見櫓を配し、中心部に主塔を頂く。典型的な城塞で、しかもこのようにかなり当時の形で残っているものは珍しいと思う。今では綺麗に整備された城塞の中で主塔を見上げながら持って来たおにぎりを頬張るのはなかなか気分の良いものだった。

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~昔は「大聖堂」と呼ばれていた迫力ある西正面~

さて、肝心の聖堂の方だが、正式には、聖ジェルヴェ・聖プロテ参事会教会堂という名前で、大聖堂と名乗れる司教座大聖堂ではないにも拘らず、その規模(全長70m、天井高24m)から昔は「ジゾール大聖堂」と誤って呼ばれていた。ちなみにジゾールの属する司教座はエヴルーという町で、ここにはフランボワイアン様式の素晴らしい翼廊装飾を持つ大聖堂がある(残念ながら、ここも修復工事中で全体に覆いが掛かっていてまだご紹介できていない。いつご紹介できることやら...)。

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~身廊入口から内陣方向を見る~

着工は1160年頃と、ゴシック初期の建設時期と重なるのでかなり古い。1249年にはゴシック様式で内陣が完成する。その後、15世紀から16世紀に亘り建設は続けられ、数々の変更・改修を経て今の形となる。横から聖堂を見ると良く分かるが、翼廊のところで大きく聖堂の高さが異なっている。内陣の方が低く、外陣の方がかなり高い。内陣は初期ゴシックの時代に建設され、後陣は16世紀になって改築されたということなので、時代背景が関係しているのだろう。

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~翼廊部分、右が内陣で左が外陣、天井高の違いに注目~

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~外から見ると良く分かる~

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~こちらは内陣の周歩廊~

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~内陣上部はラン大聖堂のように平面になっている~

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~周歩廊から身廊方向を見る~

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~外陣側廊のほっそりとした円柱

ところで、「ゴシックとルネサンスがくっついた」というのは上記で述べたように天井高の違いはあるものの、堂内を見る限りは、建築様式の違いというのはあまり感じられない。最も、ルネサンス様式というのが、イタリアにおける古典復古様式であるので、それ以外の国ではそれぞれ独自に展開していったこともあることから、建築の構造を見て明確に「これがルネサンス様式」というのは無いのかも知れない。ただ、身廊の円柱の方が明らかにシンプルですっきりしており、かつ天井高に比べほっそりしている、ということが言える(これはむしろ後期のゴシック様式が目指したものではあるが)。

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~ルネサンス様式の螺旋階段~

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~エッサイの家系樹の彫刻~

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~ステンドグラス(1)~

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~ステンドグラス(2)~

ただ、入口を入ってすぐ右側(南側)にある螺旋階段は完全にロワールのお城で見るようなルネサンス様式。この階段のある小室には、シャルトル大聖堂やサンドニ大聖堂のステンドグラスの主題に見られる「エッサイの樹」の彫刻があり中々面白い。また、ステンドグラスも少ないながら美しいものが嵌め込まれている。

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~ゴシック様式の北塔とルネサンス様式の中央部分~

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~真正面から見る~

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~北から南へ高さが低くなると共に量塊が増していく、この反比例が独特のアクセントを与える~

ジゾール教会堂の最も魅力的なところは西正面だろう。これこそ正しく、「ゴシックとルネサンスがくっついたような」と言えるのではないだろうか。北塔は繊細なフランボワイアンの要素の入ったゴシック様式。一方、中央部分は完全なルネサンス様式で飾られている。尖頭アーチや切妻装飾は無く、円形アーチや円柱装飾が施されている。繊細な彫刻と古典的で簡素な円柱が、浮き彫り装飾となることにより複雑な印象を与える矛盾が、このルネサンス様式の中央部分に一層の魅力を与えている。そして南側の、「巨大な塔(grosse tour)」と呼ばれる、何の装飾もない、迫力のある量塊を持つ大きな壁面でしかない部分。当初はちゃんと塔を建設する予定だったらしいが、費用不足により基礎部分だけで未完成のままとなっている。だが、この単体では鈍重な南部分のお陰で、他の大聖堂西正面にはない、非常にユニークな外観を有することに成功しているのだと思う。とても個性的な面白い西正面だと思う。また、北翼廊部分は完全にフランボワイアン様式となっている。

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~南側面~

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~フランボワイアン様式の南翼廊と内陣周歩廊~

こういう中規模のフランスの教会堂を見てつくづく思うのだが、フランスのゴシック様式の大聖堂や聖堂は、個々の部分が、全体を生きた一つの存在として成立させるために貢献しており、その存在感が現在でも進行形で生き生きと見る者に伝わってくるのである。そうしてみると、やはりイタリアのゴシック建築というものは、本来一つの構成要素であるはずの西正面、堂内装飾等がそれぞれ単独で存在しており、全体として見ると、美しいのだが、生き生きとした存在感というものは感じられないのだ。改めて、フランスのゴシック建築は素晴らしいなあ、ということを実感した一日だった。


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クータンス

Author:クータンス
学生時代からフランスとゴシックの大聖堂に魅せられ、紆余曲折の人生を歩んだ結果、フランス永住の道を選択しました。
ここでは、フランスを中心としたゴシックの大聖堂を紹介したいと思いますが、フランスでは夜になると大聖堂は勿論のこと、殆どの歴史建造物がライトアップされます。また、単なるライトアップのみではなく、いくつかの大聖堂では、素晴らしい光のスペクタクルを見せてくれるところもあります。こういった大聖堂の写真も一緒に載せていきたいと思います。

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