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セー大聖堂(ノルマンディ)

パリ西部に広がるノルマンディー地方にもゴシック建築が数多く存在する。今迄いくつか紹介してきた美しいフランボワインアン・ゴシックの諸聖堂に加え、大聖堂のような大規模なゴシック建築には、「ノルマン・ゴシック」と呼ばれる特徴を持つゴシック建築が存在する。

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~ノルマン・ゴシックの典型、セー大聖堂西正面~

ノルマン・ゴシックの特徴は、垂直に伸びる直線の多用による上昇感の強調、低い天井、中央交差部の採光塔、といったものが挙げられるが、これらは、英国のゴシック建築にも共通するものだ(但し、最初の点は、垂直の線は多用されるものの、ノルマンディー地方の大聖堂には尖塔を有するものが多いが、英国の大聖堂には殆ど存在しない)。

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~大聖堂遠景~

この共通点の理由は歴史的背景を見れば明白で、丁度ゴシック様式が発展した時期、ノルマンディーと英国は一つの国であったからだ。1066年、当時のフランス王国臣下のノルマンディー公国ギヨーム征服王がイングランドを侵略、配下に収めることになる。その後、1154年には、イングランドにプランタジネット朝が成立するが、これもフランスの略左半分を領土としていたアンジュー帝国のプランタジネット家が支配する王朝で、名前は違えど、一つの国であることは同じ、共通の文化圏の中で同じ芸術様式が発展していったわけだ。英語の基礎が生まれたのもこの頃で、単語にラテン語起源のものが多いのもこのためだ。

ただ、同じ共通点を持つとは言いながらも、イル・ド・フランスを中心に広がった所謂フランス式ゴシックの影響も受け、例えばクータンス大聖堂などのように、ブールジュ大聖堂のような五廊式を採用しているものや、サン・ドニ大聖堂のように内陣の放射状周歩廊を備えているものなど、英国のゴシック建築には無い要素も兼ね備えている。

さて、今日は、こういった特徴を持つノルマン・ゴシックの中でも、かなりユニークな外観をしているセー大聖堂をご紹介したい。

セーの町は、ノルマンディー地方の南西部分を占める低ノルマンディー地域圏に属すオルヌ県にある小さな町だ。大聖堂があるにも拘らず、県庁所在地は南に20km強程下ったアランソンという町にある。セー大聖堂をご紹介する前に、アランソンの町にある、フランボワインアン様式の美しい聖堂も少しご紹介しておく。

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~アランソン聖堂のフランボワイアン様式の西正面~

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~大きく開かれたポーチ~

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~装飾の付加されたオジーブ~

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~西正面内側~

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~フランボワイアン様式の切妻装飾~

ノートルダムに捧げられた聖堂は1356年に建設が着工され、16世紀には大部分が完成している。小規模ながら、フランボワイアン様式の西正面が素晴らしい。大きく穿たれたポーチの上部に繊細な火炎様式の装飾彫刻が飾られている。堂内天井のオジーブも装飾が付加されている。

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~夕陽を浴びる西正面~

ということでセー(Séesと書く)の大聖堂だが、垂直の線を多用した西正面の構成をご覧頂ければお分かりのように、ノルマン・ゴシックの典型の一つであるが、例外的に中央交差部には採光塔は存在しない。

全長83.6m、天井高24m、西正面尖塔の高さ70mと、やや小ぶりな大聖堂だが、人口僅か4.5千人の町からすれば不釣合いな程大きな大聖堂だ。イル・ド・フランス周辺の主要な大聖堂と同じく、ノートルダムに捧げられた大聖堂は、1220年に建設が着工され、14世紀前半には大部分が完成した。その後、百年戦争を始めとして、度重なる戦争による被害を受け荒廃し、ついには1740年に閉鎖されてしまう(中央交差部の採光塔も元々は存在していたのだが、18世紀に取り壊された)。その後19世紀を通じ、ヴィオレ・ル・デュックの弟子であるヴィクトル・リュプリック-ロベールらによって抜本的な修復が行われ(内陣などは、全面的に建て直されたそうだ)、今見る形となった。

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~西正面に備え付けられたフライングバットレス~

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~巨大な正面控え壁を見上げる~

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~まるでロケットのよう~

歴史に翻弄されてきたセー大聖堂だが、一目見た印象は、「かっこいい」大聖堂だ。垂直な線が上へ向かうにつれ統合・収束していき天に昇るような上昇感を強調する。双塔基部では2つの尖頭アーチが上段で一つとなって、そしてその上に尖塔が乗っかり、また、中央部分では入口の大ポーチの上に複数の窓の穿たれた尖頭アーチが連なり、さらにその上には透かし彫りのさらに細い尖頭アーチが繋がるといった、見る者に強い垂直性、上昇感を与える効果を現出している。加えて、他のノルマン・ゴシックには無い独特の構成が、西正面に備え付けられたフライングバットレスと巨大な控え壁だ。

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~大聖堂全景~

今までもご説明してきたように、フライングバットレスと控え壁は、大聖堂の自重や風圧力を支えるために側面や後部に備え付けられるものであって、西正面に備え付けられるものではない。資料が無いので、構造上の必要性は分からないが、より規模の大きな大聖堂西正面でもフライングバットレスや控え壁で支えられている西正面は存在しないので、セー大聖堂のものは、恐らく装飾としての付加なのであろうと思われる。これは真正面から見るとあまり分からないのだが、斜め前あるいは横から見ると、バットレスと控え壁が大きく迫り出していることが見て取れる。先程お話した正面から見た垂直性と同様、下部の巨大な控え壁が上段になるにつれ、段階的に小さくなっていき、最後にはフライングバットレスに引き継がれるといった、垂直性・上昇性の視覚的効果が見事に発揮されている。前、横、斜め、いずれから見てもまるでSF映画のロケットのように、上へ向かってすっと伸びている印象を与える。これが先に、「美しい」ではなく、「かっこいい」と述べた理由だ。写真を見て頂くと上記の印象は良くご理解頂けると思う。

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~身廊から内陣方向を見る~

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~ノルマン様式の身廊壁面~

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~翼廊壁面~

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~南翼廊~

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~内陣最奥部の放射状礼拝堂~

堂内身廊の構成もノルマン・ゴシックの典型、高窓層に擬似階上廊の透かし彫りが設けられている。内陣周歩廊には、冒頭で述べた通り、ノルマン・ゴシックの特徴に加え、イル・ド・フランスゴシックの特徴である、放射状礼拝堂が設けられている。残念ながら、ここもまた修復工事を行っており、外部からは美しい放射状礼拝堂の構成は見ることができない。

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~内陣、身廊に比べ、壁面がステンドグラス化している~

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~内陣高窓層のステンドグラス~

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~内陣周歩廊から中央部を見上げる~

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~南薔薇窓~

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~北薔薇窓~

内部で最も印象的なのは、翼廊の薔薇窓だろう。南北両方共美しいが、特に北側薔薇窓は六角形を表すように長窓が配置され、間や周りに小薔薇窓が配置される、という珍しい構図。深い青・紫を主体とした色彩がとても美しい。ここでも、収縮色、膨張色の原則は守られており、北の薔薇窓は青主体、南の薔薇窓は赤主体となっている。

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~夕闇が迫り~

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~尖塔のシルエットの向こうに三日月が見える~

夜のライトアップも写真に収めたく、大聖堂前のレストランで夕食を取った。なんの変哲もない普通のレストランだったが、一応ノルマンディなので、名物のガレットを頼んだ。確か10.75ユーロだったが、前菜、メイン、デザート全てガレット(デザートはクレープだったが)で、物凄いボリュームだった。前菜は卵とチーズのガレットだったが、これだけでも十分メインになりそうなボリューム。結構お腹一杯になった後に出てきたメインのペイザンヌというガレットのボリュームには本当に驚いてしまった。山程具が入っており、厚さがお好み焼きのように3cm位あった。とても食べ切れず、味も結構良かったのだが、残念、半分位残してしまった。田舎町のレストランは本当に安い。

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~ライトアップされた西正面~

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~ライトアップ全景~

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~西正面尖塔と屋根の対比が美しい~

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~南側面~

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~北側面~

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~ライトアップ全景、放射状礼拝堂が修復中で良く見えない~

夕食とシードルで結構いい気分になっている内に日が暮れてきた。ライトアップに照らし出された大聖堂は、淡いベージュ色の光と、屋根の青色のライトアップのコントラストがとても美しく、また、内部から照らし出されて浮かび上がる翼廊薔薇窓との対比も素晴らしかった。セー大聖堂は今回初めて訪れたが、規模は小さいながらも、まだまだ見るべき大聖堂が沢山あるなあ、と思わされた。

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プロフィール

クータンス

Author:クータンス
学生時代からフランスとゴシックの大聖堂に魅せられ、紆余曲折の人生を歩んだ結果、フランス永住の道を選択しました。
ここでは、フランスを中心としたゴシックの大聖堂を紹介したいと思いますが、フランスでは夜になると大聖堂は勿論のこと、殆どの歴史建造物がライトアップされます。また、単なるライトアップのみではなく、いくつかの大聖堂では、素晴らしい光のスペクタクルを見せてくれるところもあります。こういった大聖堂の写真も一緒に載せていきたいと思います。

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