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パルマ・デ・マヨルカ大聖堂(スペイン、マヨルカ島)

バルセロナを駆け足観光し、フェリーでマヨルカ島に向かう。予約の段階から、コンファメーション等全ての書類はスペイン語だし、フェリーの出発場所も今一つ不明瞭で、心配していたのだが、港に行ってみると案の定、どこから出発するのか、良く分からない。なんとか乗る船の停泊場所を見つけ、ギリギリ間に合った。コルシカ島に行った時のフェリーよりは小さかったが、それでもかなり大きい船だ。丁度夜中にバルセロナ港を出発する。欧州に住んで、旅行というものが日常茶飯事になっていても、真っ暗な大海原に向け船が動き出すのを見ていると、「旅」に対する感慨が湧き上がってくる。子供達もうきうきしているのか、眠いはずなのに甲板を走り回っている。とは言うものの、朝6時にはマヨルカ島に着いてしまうので、キャビンに戻り、寝ることにする。

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~朝日を浴びるパルマ・デ・マヨルカ大聖堂~

朝日が徐々に海原を明るく染め始める頃、マヨルカ島に着いた。着岸した港は、島最大の都市パルマ・デ・マヨルカと丁度島の反対側(島の一番北)にあるアルクディア港。最初の2泊はパルマに滞在するのだが、予約の際、良く確認せず、アルクディア港行きのフェリーを予約してしまったのだ。人っ子一人いない静かな朝の港を出て、マヨルカ島を縦断、パルマに向かう。小さな島なので、45分程でパルマに着く。市内に入り、海岸線沿いの道を走っていると、いきなり眼前に巨大な建築物が姿を現した。今回の旅行の一番の目的、パルマ・デ・マヨルカ(パルマ)大聖堂だ。

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~西正面~

パルマ大聖堂を訪れるのは実に15年振り。その間、転職、結婚、家族が出来たり、色んな事があった。本当に久しぶりに再会した大聖堂は、朝日を浴びて、とても美しかった。

島の規模にしては、などという次元ではなく、全ゴシック大聖堂の中でも最大規模を誇るパルマ大聖堂であるが、何故中世の時代に、大陸から孤立した島にこれほどの大規模な大聖堂が建設されたのかを説明するために、大聖堂をご紹介する前に、簡単にマヨルカ島の歴史に触れさせて頂きたい。

マヨルカ島の歴史は古く、紀元前6000〜4000年頃には既にに人が定住していた。その後、紀元前100年頃にはローマの支配下となり、パルマ・デ・マヨルカの町が築かれるが、ビザンティン帝国の統治下には、北アフリカより北上してきたイスラム勢力の侵入を受け、ついに903年には、当時イベリア半島を支配していたイスラム王朝の範図に含まれることになる。ただ、イスラム教徒による支配というのは、あくまでキリスト教徒からの視点によるもの、マヨルカ島の発展という意味では、イスラム教徒は大きく貢献したことになる。当時、北アフリカから中東一帯全てを領土としていたイスラム王朝であるアッバース朝の地中海貿易の中継拠点として、マヨルカ島は大いに栄え、多様な文化が入り込み、また、農業や手工業等も発展していく。

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~ホテルのテラスからパルマの町と大聖堂を眺める~

海に浮かぶ豊かな島はどの時代でも、どの場所でも、権力者なら手にしたいと思うもの。地中海貿易の富を得るため、キリスト教徒がレコンキスタ(日本語では国土回復運動と世界史では習っているが、Reconquista、そのまま訳すと「再征服」と言うことになる)という大義名分の下、マヨルカ島の奪還を目指す。実行に移したのは、カスティーリャ・アラゴン連合国の、征服王と呼ばれたハイメ一世。征服後の利権を狙う、商人やキリスト教聖職者の後ろ盾を得て、1229年にイスラム教徒をマヨルカ島から駆逐する。その後、ハイメ一世は、バレアレス諸島の他の島々やバレンシアを次々と征服、イベリア半島における領土の拡大を進めていく。以降、アラゴン連合国はシチリア、イタリア南部、ギリシャの一部迄をも含む一大地中海国家にまで発展したことは前回お話した通り。こうした、当時盛隆を極めた国家の、イスラム教、キリスト教の文化が交ざり合った、地中海貿易の窓口となっていたことが、パルマ大聖堂のような、大規模かつ技術的にも非常に高度な建築物を、地中海に浮かぶ小さな島に現出させることを可能ならしめた要因となっていると言える。

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~西正面を仰ぎ見る~

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~市の東側の丘の上にあるベルベル城より大聖堂を見る~

ということで、少し回り道をしてしまったが、パルマ大聖堂をご紹介していきたい。建設が開始されたのは1229年、ハイメ一世がマヨルカ島奪還を記念し、建設を命じた。献堂式は1346年に行われるものの、その後も建設は進められ、完成に至ったのは1601年のことであった。

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~広大な堂内空間、西正面側から内陣方向を見る~

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~こちらは西正面方向を見たところ~

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~垂直性を強調した細い石柱~

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~側廊から身廊天井を見る~

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~身廊上部と側廊のステンドグラスが規則正しく並ぶ~

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~この広大な空間!側廊だけで中規模の大聖堂の身廊程の規模がある~

今までも、他の大聖堂をご紹介する中で何度も言及してきたが、パルマ大聖堂の特筆すべき点は、何と言っても、その巨大さと独特な建築構造にあると思う。全長121mと、大規模なゴシック大聖堂の中では特に目立った長さでは無いが、驚くべきは天井の高さで、何と44mもある。当時、これよりも高い天井を架けていたゴシック大聖堂は、ボーヴェ大聖堂だけだ。ご存知の通り、ボーヴェ大聖堂は未完のままであり、完成にまで至ったゴシック大聖堂としては、最も高い天井を持つゴシック聖堂ということになる(ミラノ大聖堂は45mの天井高を有するが、完成は19世紀に入ってからであり、ケルン大聖堂同様、この二つの大聖堂は、他のゴシック大聖堂と同列に比較すべきではないと私は思う)。

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~内陣上部のステンドグラスと天井~

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~現代のホールを思わせるような細い石柱~

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~西正面薔薇窓と身廊のステンドグラス~

しかしながら、こうした単なる数字の上での比較ではなく、パルマ大聖堂が真に素晴らしいゴシック大聖堂である理由は、その内部構造と、それを可能にした特異な外観だ。堂内に入ると、桁外れに広大な空間に圧倒されてしまう。今回の旅行で順を追ってみてきた南方ゴシックの最高峰と言っても良いだろう。翼廊が無いため、広々とした空間が遮るもの無く、内陣迄伸びている。そして、バルセロナやトゥールーズのジャコバン聖堂と同様の細い円柱が天井を支えているのだが、その効果ははるかにドラマチックだ。南方ゴシックの特徴としての、身廊の高いアーケートとそれにより側廊へと開放された空間、そしてアーケードからさらに44mもの天井迄伸びる円柱の作り出す垂直線が、他のゴシック聖堂とは比較にならない上昇感と、奥行き、横方向への広がりを生んでいる。これ程までに広大な堂内空間はどのゴシック大聖堂にも無いものだ。以前もご紹介したことのある、ゴシック建築の研究家ロバート・マーク氏が、その著「ゴシック建築の構造」で、このパルマ大聖堂の内部空間を創出させる円柱の生み出す効果を数字で例示しているので、以下に参照させて頂く。

            石柱の高さ     直径    比率
パルマ大聖堂       22m        1.3m     16.9
ボーヴェ大聖堂    14.6m        1.5m     9.7
アミアン大聖堂    12.5m        1.5m     8.3
ケルン大聖堂     11.9m        1.6m     7.4

この、他の大聖堂には無い比率が、広大な内部空間創出に大きな役割を果たしていることが容易に理解できると思う。

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~西正面薔薇窓~

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~拡大したもの~

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~内陣上部薔薇窓~

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~拡大したもの、本当はもっと鮮やかな色合いなのだが写真ではうまく写らず残念~

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~側廊のステンドグラス(1)~

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~側廊のステンドグラス(2)~

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~側廊のステンドグラス(3)~

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~側廊のステンドグラス(4)~

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~堂内に映し出されるステンドグラスの光~

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~石柱にゆらめく虹彩~

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~こちらは西正面薔薇窓の光が壁や柱にくだける~

勿論、こういった規模の点だけでなく、(あるいは上記のような特色のある内部空間が生み出す)パルマ大聖堂の美しさも、他のゴシック大聖堂の追随を許さないものだ。窓に嵌め込まれたステンドグラスは、イル・ド・フランスの大聖堂に比べ、決して大きくは無いが、南国らしい鮮やかな濃い色彩が、強い陽射しによって、堂内にも鮮明な光彩を落としていく。壁面や円柱には色とりどりの模様が描かれ、そして、ステンドグラスを通し入り込んだ陽射しが、淡い薔薇色や藍色に染められ、天井近くに漂い浮かんでいるよう。言葉にならない幻想的な空間を現出する。大きな薔薇窓は聖書の主題を描くのではなく、鮮やかな色彩のハーモニー。大聖堂東部の内陣上部にも薔薇窓が配置されているので、東西両方向から極彩色の光の輪が降りてくる。

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~ガウディの内陣祭壇~

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~天蓋~

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~側廊礼拝堂の彫刻(1)~

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~側廊礼拝堂の彫刻(2)~

内陣も独特で、フランスのゴシック聖堂のように放射状礼拝堂はなく、平面となっている。一段と奥まった所には祭壇が設けられているが、これは、大聖堂修復の際iに、1901年から1914年にかけてガウディが手掛けたもの。あまりの奇抜な発想に、参事会から反発を受け、途中で放棄してしまったが、天蓋等にガウディらしい色彩の造詣豊かな彫刻や装飾が見られる。

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~大聖堂側面、巨大なフライングバットレスと下段の控え壁~

外観もまた、非常に独創的だ。側面の大きなフライングバットレスと、その下部のリズミカルな連続する控え壁は、これだけの大規模な内部空間を支えるためと、控え壁の内側に礼拝堂を設けるためのもの。ちなみに、再度ロバート・マーク氏の研究を引用させてもらうが、パルマ大聖堂の構造を分析すると、略完璧に自重、風圧力を支える構造になっているらしい。改めて、パルマ大聖堂建設に携わった建築家達の卓越した技量に驚くばかりだ。

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~イスラム風装飾を冠する西正面~

西正面は19世紀に改築されたもの。イスラム芸術の影響が見られるエキゾチックな姿となっている。

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~夕闇が降りてくると~

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~大聖堂がライトアップで浮かび上がる~

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~フライングバットレスと控え壁のリズミカルな配置が良く分かる~

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~大聖堂横の噴水とのコントラストが綺麗~

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~斜め後ろから内陣を見る~

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~斜め後ろから、少し離れて眺める~

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~ライトアップされた西正面~

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~全景を仰ぎ見る~

ライトアップされたパルマ大聖堂も大変美しい。特に、高台に建っているため、周りから全容を眺めることができる。側面のリズミカルな構成が暗闇の中に、一層鮮やかに浮かび上がる。いつまでも飽きずずっと眺めていた。

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~バルセロナに向かう帰りのフェリーから見たパルマの町とパルマ大聖堂~

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~パルマ湾から見たパルマ大聖堂全景~

また、パルマ大聖堂は、海に面して建てられているという点も、他のゴシック大聖堂には無い特色だ。パルマ港から眺めた、パルマの町の入口で海からの客を出迎えるように港を睥睨している。フェリーでパルマを発つ際にその姿を見ることができたが、それは素晴らしいものであった。美しさ、規模、構造上の独創性と建築技術の高さ、全ての点で、最も素晴らしいゴシック大聖堂を3つ挙げろ、と問われたら、私は間違い無く、パルマ大聖堂をその中の一つに挙げると思う。マヨルカ島にあるため、頻繁に訪れることが出来ないのが本当に残念だ。次回はいつになるか分からないが、また機会を作って是非訪れたいと思う。



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No title

ブログを見て面白かったのでコメントさせて頂きました(^ω^)
もしよかったら自分のブログも見てくださったら嬉しいです★
http://daisuke0927.seesaa.net/
ちなみに料理レシピのブログです!!
これからちょくちょく拝見させて頂きます★
よろしくお願いします(^ω^)

ドイツ、ニュールンベルグに短期駐在している島田と申します。
休暇で、マヨルカ島に来て大聖堂を見て衝撃をうけました。
ドイツの重さとは違う軽やかなリズム感と、色彩、そしてイスラムの影響。
全てがとても新鮮で美しかったです。
正直私も、ケルン大聖堂は好きになれません。
素晴らしい事には変わりありませんが。。
プロフィール

クータンス

Author:クータンス
学生時代からフランスとゴシックの大聖堂に魅せられ、紆余曲折の人生を歩んだ結果、フランス永住の道を選択しました。
ここでは、フランスを中心としたゴシックの大聖堂を紹介したいと思いますが、フランスでは夜になると大聖堂は勿論のこと、殆どの歴史建造物がライトアップされます。また、単なるライトアップのみではなく、いくつかの大聖堂では、素晴らしい光のスペクタクルを見せてくれるところもあります。こういった大聖堂の写真も一緒に載せていきたいと思います。

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