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聖ロンバウツ大聖堂(ベルギー、メッヘレン)

以前、ベルギーのゴシック大聖堂として、一番大きいアントワープ大聖堂と、首都ブリュッセルの大聖堂をご紹介したが、最も美しいのは、ブリュッセルの北30km程のところにある、メッヘレンの大聖堂だ。

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~夜空に映える聖ロンバウツ大聖堂の鐘楼~

今でこそ、人口8万人程の小さな地方都市に過ぎないが、中世には毛織物業で大いに栄えた町だ。ご存じの通り、今あるベルギーは過去、色んな国の範図に置かれてきたが、メッヘレンが一番盛隆を極めたのは、ハプスブルク家の支配下に置かれていた時で、16世紀始めには、オーストリア出身の皇妃マルガリータが、当時のネーデルランドの首都をここメッヘレンに置いていた(23年しか続かず、マルガリータの死後、首都はブリュッセルに移される)。

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~グロートマルクト広場の市庁舎~

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~ゴシック様式なのが良く分かる~

こういった歴史的背景もあり、街中には立派は建築物が多い。中心にあるグロートマルクト広場を囲んで当時の美しい建物が残っているが中でも素晴らしいのは市庁舎で、民間ゴシック建築の傑作として名高い。

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~こちらは昼間の姿~

さて、メッヘレンの大聖堂をご紹介したいが、正式には、聖ロンバウツ大聖堂と呼ばれている。聖ロンバウツはメッヘレンの守護聖人で、その人生についてはあまり確かな資料が残っていない。アイルランド人ともスコットランド人とも言われており、キリスト教布教のため、この地を踏み、6世紀か7世紀頃殉教、後に聖人に列せられた。

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~天に聳えるひたすら巨大な鐘楼~

町のはるか遠くからでも、その一際巨大な鐘楼を目にすることができるが、建築様式はブラバント・ゴシック様式と呼ばれている。ゴシック様式は、フランスのイル・ド・フランスを発祥の地とし、時代の変遷と共に各地に伝播しながらその様式を発展、変化させていった、とこれまで各国のゴシック様式をご紹介する中で述べてきたことだが(イタリア・ゴシックや南方ゴシック、あるいは垂直性を強調したドイツ・ゴシック等)、ブラバント・ゴシックもこの流れの中で生まれた様式で、当時、今のベルギーを中心とした地方を治めていたブラバント公国(1183年-1795年、但し、15世紀には、ブルゴーニュ公国の、16世紀には先に述べたようにハプスブルク家の支配下に置かれる)の治世下に発展した建築様式を指す。イル・ド・フランスのゴシックに比べ、垂直性が強調されているものの、華麗さ・繊細さも備え、ノルマン・ゴシック程簡素でなく、また、フランボワイアン程華美ではない、と言ったところ。こう述べると、なんだか中途半端な様式のようにも思われそうだが、写真をご覧頂ければお分かりのように、決してそんな事はなく、とても美しい様式だ。アントワープ大聖堂(同じく、ブラバント・ゴシック様式)と比べると、多くの類似点が見い出せると思う。

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~鐘楼から見下ろしたメッヘレンの街並~

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~鐘楼の中に配置されているカリヨン~

上段冒頭でも述べたように、一番の特徴は巨大な鐘楼。塔ではなく、鐘楼と書いたのは、ヨーロッパで最も有名な49個から成るカリヨンが塔の中に置かれているからだ。カリヨンとは、鐘楼内に設置された演奏用の鐘のことで、単に時を刻む鐘とは区別される。ベルギー及び北部フランスには、このカリヨンを有する鐘楼が数多くあり、同地域にある56の鐘楼が、「ベルギーとフランスの鐘楼群」として、ユネスコの世界遺産に登録されている。中でも、聖ロンバウツ大聖堂の鐘楼は最も有名で、メッヘレンには、国立のカリヨン学校まであり、生徒達は大聖堂のカリヨンで練習することが出来る。うまくタイミングが合えば、彼らの奏でる美しいカリヨンの音色を聞くことが出来る。

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~ライトアップされ真っ白に光る鐘楼~

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~西正面から見上げた単塔式の鐘楼~

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~巨大な控え壁が鐘楼を彩る装飾にもなっている~

ちょっと前置きが長過ぎたが、とてつもなく巨大であるにも拘らず美しさと気品を備えたこの鐘楼は、単塔式で西正面に一本すっと天に向かって伸びている。四角形の巨魁が圧倒的な存在感を与えているが重々しさは無い。真っ白な壁面に、垂直の控え壁が四隅、中央から何本も天を目指す様は他に例が無い。また、この鐘楼は、ある意味、ゴシック大聖堂の中で最も重要なもの、と言うこともできる。高さ97.3mとかなり高いが、実は、当初の計画では、167mと、倒壊して今は存在しない塔も含め、世界で最も高い尖塔を建てることになっていた。設計図を以下に添付するが、なんと巨大な尖塔だろう。残念ながら、城塞建設のため資材が使われてしまったことから現在の高さで建設が中断、そのままにされ、現在に至っている。もし完成していたら、と想像してみても詮の無いことだが、やはり見てみたかった、という思いは強い。ただ、いつもお話しているように、ゴシック建築は、どこか未完で終わっていて、その先を人間の空想力で補うのが良いのだろう。

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~塔の完成図~

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~鐘楼のライトアップ、その(1)~

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~鐘楼のライトアップ、その(2)~

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~「凍れる音楽」を感じられないだろうか~

夜、その洗われたような真っ白な塔がライトアップの光に照らされ、漆黒の闇に聳える様は例えようもなく美しい。ゲーテはゴシック建築のことを「凍れる音楽(但し、原語では「凝固した音楽」と言ったのだが、英語に訳された際に「frozen music」とされたらしい)」と呼んだが、このメッヘレン大聖堂の鐘楼こそ、「凍れる音楽」という表現が相応しい塔だと思う。夜空を背景に浮かび上がる純白の塔を見上げていると、正しく、時が凍りついて停止したような錯覚に陥る。いくつかライトアップの写真をお見せするがいかがだろうか。余談になるが、数ある素晴らしいゴシック大聖堂の中で、個人的に、この「凍れる音楽」という表現が最も当てはまると思うのが、ウィーン大聖堂の尖塔だ。大変残念ながら、ここでも数年に亘り修復の覆いが被されていて、10年以上再会出来ていない。いつここでご紹介できることか。

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~垂直性と水平性が共存する堂内~

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~身廊から内陣方向を見たところ~

鐘楼の事ばかり話してしまったが、堂内もなかなか素晴らしい。全長118m、天井高28mと、かなりの規模の大聖堂だ。1200年代初めに着工し、1312年には献堂されたが、当時完成していたのは一部のみで、その後ブラバント・ゴシック様式で建設が進み、内陣が完成したのが、1451年、その翌年から鐘楼の建設が始まり、1520年に今ある高さになった。

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~高く、鋭角なアーケード~

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~内陣最奥部~

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~最奥部上部~

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~身廊にある、繊細な木造彫刻の説教壇~

身廊はアーケードが全高の半分のところにまで届いておりかなり高い。上層部分は高窓層の下部に擬似トリフォリウムが組み込まれた2層構成となっている。ただ、アーケードの円柱はかなり太く、かつ上層との間に水平線が引かれ、垂直性が一旦分断されている。ただ、ラン大聖堂等の初期ゴシック様式とは異なり、鋭角の尖頭アーチと相俟って、垂直性と水平性が程よく調和しているような印象を受ける。

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~北翼廊のステンドグラス

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~同拡大部分~

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~南翼廊のステンドグラス~

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~ステンドグラス(1)~

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~ステンドグラス(2)~

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~ステンドグラス(3)~

窓にも、あまり古いものではないが、美しいステンドグラスが嵌め込まれており、特に、翼廊は、一面大変巨大なステンドグラスで満たされている。

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~北側廊礼拝堂~

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~複雑な交差ヴォールト~

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~大理石の彫刻~

また、北側廊にある礼拝堂は天井のオジーヴ(助骨穹窿)が複雑に入り組んでおり、イギリスやドイツのそれを思わせる。囲いの下部にある大理石の彫刻には、天使の葡萄積みの様子が微笑ましく描かれている。

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~昼間の大聖堂、曇天で残念~

今回訪れた日は生憎の空模様だったが、晴天の日には、鐘楼が青空に映える様が実に美しい。外国とは言え、パリから3時間強の距離、また近い内に訪れたいと思う。


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プロフィール

クータンス

Author:クータンス
学生時代からフランスとゴシックの大聖堂に魅せられ、紆余曲折の人生を歩んだ結果、フランス永住の道を選択しました。
ここでは、フランスを中心としたゴシックの大聖堂を紹介したいと思いますが、フランスでは夜になると大聖堂は勿論のこと、殆どの歴史建造物がライトアップされます。また、単なるライトアップのみではなく、いくつかの大聖堂では、素晴らしい光のスペクタクルを見せてくれるところもあります。こういった大聖堂の写真も一緒に載せていきたいと思います。

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